忍者が使ったといわれる暗号の一つに「忍びいろは」がある。いろは文字は、「い」に始まって「ん」まで四十八文字ある(「ゐ」「ゑ」も含む)。それを、七つのへんと、七つのつくりによってできる文字で表す。当然、漢字の様に見えるわけだが、漢字でないものも含まれている。これを手紙をやり取りする双方で事前に申し合わせておき、暗号で連絡を取った。しかし、申し合わせのできていない時は、密書を持ち運ぶ者に奪い取られないように十分に注意させ、普通の文字で書いた。時には三つに分割して、三人の忍者に運ばせたりもした。誰の筆跡かがばれて困る時には、筆を糸で天井からつるして、癖が出ないようにして書いた。
密書を運ぶ時も、編み笠の内側の頭が当たる台座に挟んだり、「元結い通信」といって、頭の髪の毛を束ねるために使う元結いを密書にしたり、着物の襟に縫い込んだりして、体から離さないようにしていた。また、卵の殻とか、くるみの殻の中に入れるなど、敵にわからないようにして運んだ。
忍者は時間を知るために砂時計を持ち歩いていたが、それ以外にも時間を知る方法を知っていた。「猫の目時計」といって、猫の目の開きぐあいによって時刻を知る方法である。
猫の目玉は、夜明けの頃と日暮れの頃、昔の時刻でいうと明け六つ、暮れ六つにはいっぱいに開いていて丸く見える。
五つ、七つといわれる午前8時頃と午後4時頃には、卵形ぐらいに細くなる。四つ。八つといわれる午前10時頃と午後2時頃には、卵形がだんだん細くなって、柿の種ぐらいになる。
九つといわれる正午頃にはいっそう細くなり、針のように一直線に見える。猫の目の習性をよく知っていたので利用できたのであろう。
さまざま武術を身につけ、火薬、天文、気象、動植物の生態など、あらゆる知識を駆使していたのが忍者である。